TPPについて

2011年10月30日 18:58

日韓スワップ協定で騒いだと思えば今度はTPPである。

野田首相、TPP交渉参加の意向固める 民主党執行部からは慎重派をけん制する発言相次ぐ FNN

これは日韓スワップ協定以上に情報が出てこないので、憶測やデマがまかり通っている。
まずきちんと政府は説明すべきだ。
政治家ですらよくわかっていない、つまり情報を得られていないようだ。

TPPは様々な既得権益を破壊するだろう。
それがいいことか悪いことか、この例え話で考えてみてもらいたい。


その昔、大店法という法律があった。
大規模な商業施設が出店する際に、延べ床面積や営業時間、休業日などの制約を設けて出店を規制し、小規模な地元の商店を保護するための法律だった。
この法律のおかげで、特に商店街が発達していた町の中心部には大規模商店が出店されず、商店街は守られてきた。

ある年代以上の人は、魚屋、八百屋、肉屋、電気屋、本屋に文具屋、そのほかいろいろの商店をはしごして買物をしたことがあると思う。
そこには店主との人情味あふれたやり取りがあり、さながら、映画「三丁目の夕日」のような情景が、日本中で繰り広げられていた。

しかし、アメリカからの外圧がかかり、大店法は徐々に緩和され、やがて廃止となった。
日本中に大型の商業施設が進出し、その結果、商店街はさびれ、シャッターが並ぶ通りへと変貌することになる。
当然それを生業にしていた店主とその家族は収入を失い、新たな働き口を求めざるを得なくなった。

なぜ商店街はさびれたのか?それは大規模商業施設に比べ、買物をするのに効率が悪く、価格が高いからだ。
店主は収入を失ったが、買物をする一般市民は、利便性が向上し、大量仕入れによる安価な商品を購入できるようになった。
また、その商業施設で新たな雇用も生まれている。


TPPはこれを国の単位で行うようなことだ。
しかもあらゆる分野で。

その国にとって不向きな産業は、商店街のようにさびれてしまうことを意味する。
余程の工夫がなければ。

逆に得意な分野であれば、他国のその分野をさびれさせてしまうことになるだろう。

要するに国際分業という形になっていく。
関税なしの自由貿易が成り立っていれば、国際分業が経済成長に寄与することは明らかである。

商店街でノスタルジックな買い物をしていたいというのなら、それも一つの考え方だ。
鎖国をして日本の中だけで生きていくというのも悪くはないと思うが、外国と付き合いながら生きていくなら、関税撤廃の方向へ進んでいくしかないと思う。

資本主義経済というのは常に広がって、成長し続ける必要に迫られている。
後戻りということはできないのだ。
今さら商店街で買い物をしたいと言う人がいないように。

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コメント

  1. y16a | URL | QMnOeBKU

    Re: TPPについて

    異議あり、です。ここでは国際分業について書かれているので、その点についてだけ。
    要はリカードの比較優位論に基く考え方のように見えますが、これが成立するには幾つかの要件がありますね。各国で完全雇用が実施されていること、インフレであること(つまり需要>供給であり、物を作れば必ず売れる)、資本の自由移動がないこと、などです。
    いまや資本は思うままに自由移動できますので、比較優位に特化するための国内投資が保証されません(そうして、底辺への競争を続けるわけですが)。完全雇用など、どこの国でもできていません。そして、日本はもう長いことデフレですし、アメリカもティーパーティが跋扈している以上、遠くないうちにデフレ化する可能性が大きい。つまり、比較優位は成立しません。
    それと、現政権に説明を求めるのは無駄だと思います。多分、関税以外(つまり非関税障壁。アメリカの真の狙いは日本の非関税障壁をこじ開けることです。年次改革要望書の頃から明言しています)のデメリットについて理解していません。国内を犠牲にしても各国にお土産を差し出して波風立てないようにしよう、というのが野田の外交姿勢のようなので、バスに乗り遅れるな論と合わせても、こんな安直で拙速な姿勢のまま交渉参加するのは自殺行為ですね。交渉参加には一定のコミットメントが必要というのが国際社会の常識であり、利己的な都合で離脱したりすれば国際的に信用を失います。影響の大きさからすれば、消費税増税などよりも余程解散総選挙して国民に信を問うべき問題だと思います。

  2. Bleue | URL | IOwrre66

    格差が広がるという意味

    読んで納得。
    TPPで格差が広がると言われている意味がよくわかりました。

    我が家は製造業の中小企業を営んでおります。
    国際分業が進み、たくさんの同業者が倒産に追い込まれた「商店街の店主」側の人間です。
    今まで重要な部品は国内で生産していた大企業も、それすら海外へ持って出る流れになりつつあります。
    海外に工場が作られ、新たな雇用は海外にのみ生まれ、日本には失業者がたくさん残されました。
    恩恵を受けられるのは、安い賃金で生産できる大企業や商社だけ。
    中小企業は会社たたんで発展途上国に仕事探しに行けばよいというわけですね~

    こんな感じで、工業分野では新しい雇用は生まれないでしょう。農業もしかり。
    日本は何を武器に世界に打って出るのでしょうか?そこに日本国内の雇用はあるのでしょうか…
    子供たちを最後まで育てあげることができるのか、不安でしかたありません。
    製造コストを下げるにも限界があります。

  3. ちゃむ | URL | tHX44QXM

    Re: TPPについて

    こんばんは。
    TPPによって様々な既得権益が破壊されたとしても
    その中でも本当に良い仕事をしようとされる人たちは
    必ず生き残ることができると思います。

    御記事の内容から補足させてらいますが、
    地方の商店街は寂れたところが数知れません。
    ただ、その中でも本当にお客様のためになる商売をすることで、
    大店舗にはできない良い店を続けている方もおられるようです。

    本当に人の役に立つことをしていれば、
    制度の有無や変化などの多くは
    解決可能なものなのでしょうね。

  4. 青二才 | URL | -

    Re: TPPについて

    青二才の私にはとても理解が及びませんが、何やら問題点が多々あるようですよ。とはいえ、もちろんデマや誤解曲解もあるでしょうね。

    少なくとも情報が足りないという点ではほぼ一致しているようですので、一言だけ。

    「彼を知らず己を知らざれば戦う毎に必ず敗れる」

  5. TT | URL | -

    Re: TPPについて

    大店法でTTPの説明とは・・・。
    たとえ話にもなりません。
    がっかりです。

  6. グリッティ | URL | l7H4TccY

    皆様コメントありがとうございます。

    ネットの流れに逆らうと、コメントがたくさん入りますな。

    y16a様

    比較優位論が成り立つ要件は確かにおっしゃるとおりですね。
    ただ、その要件は机上で弾きだした数字の通りに寸分違いなくなるための要件であって、それを完全に満たさなくても比較優位論が成り立たないわけではありません。
    効果が理論上より薄れるだけです。
    ご希望と有らば細かな説明も致しますが、コメント欄でこのへんにしておきます。

    確かに政府は安直ですね。
    関税をなくす動きは1990年代から、各国とも進めてきているのに日本の準備が遅れているわけです。
    もっと早めに手を打って対応していれば、より交渉に入って行きやすかったとは思います。


    Bleue様

    TPPで格差は広がりません。
    商店街の店主は廃業しなければいけなかったかもしれませんが、近くにできたスーパーの店主に収まって収入が増えているかもしれませんよ。
    それに賃金が安い外国が、常に優位とも限りません。
    たとえ賃金が高くても、同じ物を製造していなければ優位に立てます。
    簡単に言うなとお叱りを受けそうですが、お仕事うまく行くことを祈っております。

    ちゃむ様

    お久しぶりです。
    ちゃむ様のコメントが一服の清涼剤のようです(笑)
    簡単な話しなのですが数で言えば
    生産者<<<<<<<<<<<消費者
    ですから消費者の利益を考えることが第一です。
    そうすることが生産の増大にもつながるんですけどね。

    青二才様

    ネットの風に逆らうと面倒なので、あまり書きたくはなかったんですけどね。
    乗りかかった船なのでもうちょっとやってみますよ。
    自他ともの研究を。

    TT様

    大店法が今でもあれば必ず非関税障壁として問題になったでしょう。
    TPPの話以前に、日米ではこれまでなんどもこういう話はあったのです。
    オレンジや牛肉や…
    そのときいつも農家が壊滅するとか、畜産業が壊滅するとか言われましたが、どれも壊滅しませんでした。
    なぜですか?
    結果的に消費者は安価なオレンジや牛肉を得ることができました。
    どこに問題があったのでしょう?
    素晴らしいたとえ話でおしえてくれませんか?

  7. y16a | URL | QMnOeBKU

    Re: TPPについて

    わざわざ回答有難うございます。一点だけ、別にネットの流れに逆らっているので言い返してやろうという意図ではないので、そこは誤解なきようお願いいたします。
    理論の完全性を問題にしているのではなくて、数理モデルと実体経済の乖離のことを言っているつもりなので、詳しい説明でお手を煩わせるつもりはありません。
    要点だけ書くと、所謂「Win-Winの関係」を十分に達成できるような国際分業は現実の世界では実現不可能となっており、それどころか「底辺への競争」が激化した結果、成長するどころか貧しくなる者が増え続けていること。関税撤廃による何がしかのメリットと、非関税障壁を撤廃したことによって国民が被らねばならないデメリットの比較考量が全く抜け落ちていること。従来の農産物の自由化とは根本的に問題の性質が異なること。これらを問題視しているわけです。政府が安直だと批判したのも、その点についてのみです。実際、政府・民主党はこうした想定し得るデメリットについて、そんなものは議論の対象になっていないと国民にウソを吐き続けていますから。
    こうした点を押さえた上で、野田政権の姿勢云々とは関係なく関税を撤廃した方がメリットが大きい、と主張されることについては、自由意志に従って存分になされることが宜しいかと思います。
    コメント欄で遣り合っても仕方がないので、これにて。失礼しました。

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