TPPと民主党の無策 TPPについて(4)

2011年11月13日 15:45

11月11日、TPP参加に関する結論を1日先延ばしにした野田首相は、TPPで関係国との協議に入る、と表明した。
それに先だって行われた衆参両議院でのTPP集中審議を聞いていたが、すでに結論は出ているのに、審議の後に結論を出すと言うばかりで、この言いわけを使う為に1日先延ばしにしたのかと勘繰りたくなった。
予定通り10日に参加表明していれば、「そんなことも知らないのに参加するのか!」と責められたことだろう。
それぐらい野田首相はTPPの知識がなかった。
民主党で何十時間も議論したという経過と結果は、どこにどう報告されたのだろうか?

それよりなにより、この瀬戸際になってようやく集中審議が開かれるというお粗末さは、政府の無為無策を表している。
日本政府が少なくとも2年以上、この問題に関して放置してきた事実を指摘しておきたい。

2009年11月、初来日したオバマ大統領は、東京サントリーホールで演説した。
奇しくもこの年は日米共に政権が変わり、日本では民主党が政権を勝ち取り、2009年9月に鳩山由紀夫政権が発足していた。

オバマ大統領はこの時の演説で、大きなウエートを割いて、アジア太平洋地域での経済連携の話をし、韓国とのFTA交渉の話までして、日本の経済戦略での決断を促している。

→ http://www.whitehouse.gov/files/documents/2009/november/president-obama-remarks-suntory-hall-japanese.pdf ※PDF

ちょうどその頃、TPPのラウンドは3回目を終えたばかりで、参加表明するには遅すぎることはなかった。
現にマレーシアは3回目の会合で参加表明をしている。

しかし、鳩山由紀夫政権はこの後、普天間問題に振り回されていく。

寝た子を起こした普天間問題は、沖縄を燎原の火のごとくつつみ燃え上がり、収拾がつかなくなった。
この問題を最後までまとめる事が出来ず、支持率も低下した鳩山は参議院選挙を前に菅直人に交代した。

首相が変わったものの、参議院選挙では与党民主党は敗北、参院での過半数を失い国会は停滞することになる。

2010年6月に発足した菅直人政権は、ねじれ国会に苦しみ、その運営にエネルギーをそがれていく。
それでも2010年11月に横浜で行われるAPECを前に、今回と同じように泥縄で、「日本はまた再び大きく国を開くことを決断した」と表明。
TPP参加への協議に入る事を発表したが、正式な参加表明ではなかったため、APECでも相手にされなかった。
その年の12月に行われた4回目の交渉に、オブザーバーとしての参加を要請したが、にべもなく断られている。

この時参加を決断していれば、せめてこの時に今のように議論をし、国会で集中審議をしていれば、日本の置かれている立場は大きく違ったものになっていただろう。

菅直人政権も2010年の9月に起きた尖閣諸島中国漁船問題に菅直人自身の外国人献金問題などの対応に追われ、TPPへの参加問題は停滞したままだった。
そこへ東日本大震災である。

文字通りTPPは忘れ去られた。

しかし世界は動いていく。
TPP交渉は5回6回7回と重ねられ、日本の官僚は会議の会場に張り付いて内容を聞き出そうとしなければならなかった。

追い込まれた日本政府は、今年11月のAPECの前に参加表明し、何とか滑り込もうとアメリカ国務省やオバマ大統領に協力を要請した。
安全保障上日本の参加を望んでいた国務省と大統領は、通商部や議会を説得し、日本の参加を受け入れる方向に持って行った。
これは前回書いたとおりである。(
TPPについて(3) 2011年11月09日)

すでに8回のラウンドが終わり、日本の主張を表現する場すら、極めて限定されている。
これは交渉云々以前の問題である。

この2年間の日本政府の無為無策が起こした当然の帰結と言っていい。
この無作為はもはや犯罪的だ。

野田首相にはもはや参加しか選択肢が残されていない。
これも前回書いたとおりである。

ならばせめて堂々と参加の表明をすればいいものを、関係国との協議、と表現を弱め、反対派を表向き懐柔するような表現をした。
この表現であれば、菅直人前首相の表現と大差ない。
だからAPECでの加盟国会合に招かれもしないのである。
→ 
TPP、首相さっそく厳しい洗礼 加盟国会合招かれず 朝日新聞

菅直人前首相はオブザーバー参加を許されたが、当時と今とでは協議の煮詰まり方が違うのだ。

アメリカの慈悲にすがって参加するような形になり、捗捗しい交渉など出来るわけがない。
しかし退くことも、もはやできない。
チェックメイトだ。

あとは玉手箱の中身がよいものであるように神頼みするしかない。


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TPPについて(3)

2011年11月09日 21:12

今日こういう報道があったわけだが
「日本とのTPP交渉判断慎重に」、米超党派議員がオバマ政権に要請 ロイター
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111109-00000696-reu-bus_all

議員グループが米通商代表部(USTR)のロン・カーク代表に宛てて書簡を送った。

 それによると、議員らは「日本が交渉に参加すればTPP交渉に新たな次元と複雑性が加わることになる。このため(米政府に対し)いかなる決断も下す前に連邦議会その他の関係者に相談するよう強く求める」と要請した。

 その理由として、同書簡は「日本は長い間、国内市場を意味のある競争から保護してきた」と指摘し、米国は日本政府が本気で市場を開放し、米自由貿易協定(FTA)が求める高い水準を満たす用意があるのかを十分確認する必要があるとしている。


どこをどう読んでも、日本が協議に参加するといろいろ面倒だ、というアメリカ議会の声なのだが、こんな話でも“アメリカ陰謀論者”さんたちには、別に映るみたいね。
ほんと、バイアスって怖い。

前にも書いたけど
TPPのついて(2) 2011年11月03日 17:50)アメリカが日本にTPP参加しろって言ったわけじゃなくて、日本が参加するって言ったんだからね。

それで今回は、
「なぜ協議から離脱できないのか」について書きたいと思います。

TPPに参加すると抜けられない、いや抜けられると、相反する声が飛び交っていますが、これはどちらも真実です。

TPPは条約ですから、最終的に議会で批准しないと発効しません。
ですから、批准しなければ抜けられるわけですね。
そういう意味では抜けられる、というのは本当です。

ではなんで抜けられないという声があるのか?
それは、日本が途中から参加するのにアメリカの国務省とか、オバマさんとかに世話になったからです。

TPPの話は今日本で話題になっていますが、もうこれまでに8回も話し合い(ラウンド)を重ねているんですね。
もうそろそろ妥結しようかって頃合いです。
その間際になって日本が入りたいって表明し、アメリカにも協力を要請したので、国務省やオバマさんまでもが骨を折ってくれて、通商部や議会を説得し、環境づくりをしてくれたわけです。

そうやって参加できる環境はできたのです。
それなのに参加してみたら気に入らないからやめとくわ、って言えるかってことですよ。

盛んにアメリカへのお土産とか言われていますが、オバマの顔を立てる必要はあるわけです。
結局参加もしないっていったら、「なんだ自分から言い出しといて、恩知らず」って話です。

まあ事ここに至るまでしっかり議論していなかった日本が悪いんですね。
少なくともアメリカさんが責められる筋合いはないわけです。

ではまた、TPPについて(4)でお会いしましょう(笑)

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TPPについて

2011年10月30日 18:58

日韓スワップ協定で騒いだと思えば今度はTPPである。

野田首相、TPP交渉参加の意向固める 民主党執行部からは慎重派をけん制する発言相次ぐ FNN

これは日韓スワップ協定以上に情報が出てこないので、憶測やデマがまかり通っている。
まずきちんと政府は説明すべきだ。
政治家ですらよくわかっていない、つまり情報を得られていないようだ。

TPPは様々な既得権益を破壊するだろう。
それがいいことか悪いことか、この例え話で考えてみてもらいたい。


その昔、大店法という法律があった。
大規模な商業施設が出店する際に、延べ床面積や営業時間、休業日などの制約を設けて出店を規制し、小規模な地元の商店を保護するための法律だった。
この法律のおかげで、特に商店街が発達していた町の中心部には大規模商店が出店されず、商店街は守られてきた。

ある年代以上の人は、魚屋、八百屋、肉屋、電気屋、本屋に文具屋、そのほかいろいろの商店をはしごして買物をしたことがあると思う。
そこには店主との人情味あふれたやり取りがあり、さながら、映画「三丁目の夕日」のような情景が、日本中で繰り広げられていた。

しかし、アメリカからの外圧がかかり、大店法は徐々に緩和され、やがて廃止となった。
日本中に大型の商業施設が進出し、その結果、商店街はさびれ、シャッターが並ぶ通りへと変貌することになる。
当然それを生業にしていた店主とその家族は収入を失い、新たな働き口を求めざるを得なくなった。

なぜ商店街はさびれたのか?それは大規模商業施設に比べ、買物をするのに効率が悪く、価格が高いからだ。
店主は収入を失ったが、買物をする一般市民は、利便性が向上し、大量仕入れによる安価な商品を購入できるようになった。
また、その商業施設で新たな雇用も生まれている。


TPPはこれを国の単位で行うようなことだ。
しかもあらゆる分野で。

その国にとって不向きな産業は、商店街のようにさびれてしまうことを意味する。
余程の工夫がなければ。

逆に得意な分野であれば、他国のその分野をさびれさせてしまうことになるだろう。

要するに国際分業という形になっていく。
関税なしの自由貿易が成り立っていれば、国際分業が経済成長に寄与することは明らかである。

商店街でノスタルジックな買い物をしていたいというのなら、それも一つの考え方だ。
鎖国をして日本の中だけで生きていくというのも悪くはないと思うが、外国と付き合いながら生きていくなら、関税撤廃の方向へ進んでいくしかないと思う。

資本主義経済というのは常に広がって、成長し続ける必要に迫られている。
後戻りということはできないのだ。
今さら商店街で買い物をしたいと言う人がいないように。

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