2022年05月15日 13:04
先日報道された被害者の関係者向けお詫び文に、そのあたりを伺わせる文章・ニュアンスを垣間見たので、添削しながら説明してみたいと思う。

北海道放送乗客の家族に配布した文書の内容は次の通りです。
令和4年4月27日における説明内容の訂正とお詫びについて
被害者ご家族の皆様
有限会社知床遊覧船 代表取締役 桂田精一
この度は、当社の船舶のクルーズ中に大変な事故を起こし、亡くなられた被害者の方々及び捜索中の被害者の方々に対しては大変申し訳ございません。また、亡くなられた被害者の方々のご家族、捜索中の被害者の方々のご家族に対しても大変なご負担をいたしておりますとこと重ねてお詫び申し上げます。
当社(私)の落ち度について
運航基準の第10条によれば、船長は、当社営業所にいる運航管理者に対して、運航基準図に記載の各地点(13箇所)に達したとき、1.到達地点名、2.通過時刻、3.天候、風向、風速、波浪、視程の状況等を連絡しなければならないとされています。そして、この報告内容は、毎回記録も残しております。しかし、事故当日は、上記連絡も記録も行っていませんでした。
北海道運輸局に提出済み当社の届け出内容を確認したところ、当社における運航管理者として私が登録されております。当社の安全管理規程によれば、運行管理者は、航行中は原則として営業所にいなければならず、営業所を離れる場合には運航管理補助者と常時連絡が取れる状態にしておく必要があるとされています。
当日の当社の勤務体制は、営業所内に運行管理補助者として登録している社員はおらず、私が病院に行くために、営業所を離れたこと自体が問題であったと思います。また、運航管理補助業務を事実上担当できる社員はおりましたが、その者に対し、当日、営業所の無線に不具合があるため、携帯電話で豊田船長と連絡を取り、航行状況の把握に努めるように指示することもしておりませんでした。運航基準通りに当社がKAZU Ⅰの運航を行っていれば、より早期に帰港決定するなど事故の発生を回避できた可能性はあったと思います。大変、申し訳ありません。
私は、船舶の運航等について社員に任せている部分が多く、私自身の運航管理者としての自覚も足りませんでした。私の無責任な対応により、このような重大な事故を発生させてしまい、重ねてお詫び申し上げます。
まず、何度も「当社」という表現がでてくるんだけども、「弊社」です。
「当社」は同等か目下のものに使う表現で、被害者の関係者に使う言葉ではない。
当社(私)の落ち度について
「当社」という表現は上述の通りだが、「落ち度」という表現も不適切。
俗っぽすぎてこういう書面で使わない方がいい。
また”(私)”って、≒私という表現をしたかったんだろうけど、法人と代表者はもともと≒だよ。
よって
「弊社の過失について」
この報告内容は、毎回記録も残しております。しかし、事故当日は、上記連絡も記録も行っていませんでした。
毎回記録「も」残しております、→ ほんとかな? 「も」と書くってことは何々して、何々「も」しているっていうことを言いたいから「も」と書く。
この場合、
の連絡をちゃんとしていましたよ、そして記録「も」残してありましたよ、ということを強調したい意思が感ぜられる。運航基準図に記載の各地点(13箇所)に達したとき、1.到達地点名、2.通過時刻、3.天候、風向、風速、波浪、視程の状況等を連絡しなければならないとされています。
しかし、事故当日だけしていなかったってことありますかね?
連絡はあとから調べようがない、記録はあとから改ざんすることができる。
普通に記録していたのなら、「記録『も』残しております」とわざわざ書く必要はない。当たり前だからね。
「営業所内に運行管理補助者として登録しているものはおらず…」という書き方、普通に読むと当日の営業所内には運行管理補助者がたまたまいなかった、という風にとれる。当日の当社の勤務体制は、営業所内に運行管理補助者として登録している社員はおらず、私が病院に行くために、営業所を離れたこと自体が問題であったと思います。
しかしながら
「運航管理補助業務を事実上担当できる社員はおりましたが」という書き方、『事実上』とつけるのは、実務的に補助業務はできるけど、登録はしていないよ、っていうことを詰められた時にかわせるよう、わざとぼかして書いてあるとしか思えない。運航管理補助業務を事実上担当できる社員はおりましたが、その者に対し、当日、営業所の無線に不具合があるため、携帯電話で豊田船長と連絡を取り、航行状況の把握に努めるように指示することもしておりませんでした。
つまり、運行管理補助者は登録していない、やろうと思えばできるやつはいるけどやってないねっていう内容を、さももっともらしく書いているだけだと思う。
「当日、弊社の勤務体制といたしましては、運航管理者であります私が外出している状況で、運航管理補助者として登録しているものはおらず、事実上船長任せになっておりました。」
もう言葉のごまかしで通用する状況でもないと思うが、ちょっとでも聞こえの良いように書いてあるのは、まだ逃れようという気があるからでしょうね。
「板子一枚下は地獄」 海で商売するなら肝に銘じておかねばならない。
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